2015年11月12日木曜日

スペシャライズドジャパンチームによる,いぜな88トライアスロンレースレポート!

11月1日に沖縄の伊是名島で開催されたいぜな88トライアスロン。
エンデュアライフのスタッフとスペシャライズドジャパンのスタッフで出場してきました。

今回スペシャライズド平澤選手のレポートをご紹介します。トライアスロン初チャレンジとなった平澤さんの取り組みやレースに対する熱い想いの詰まったレポートをぜひご一読ください!!

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こんにちは。

スペシャライズド・ジャパン イベント及びスポーツマーケティング担当の平澤太郎です。

この度、初めてトライアスロンにチャレンジしました。

 

イベント担当者として、色々な会場で接客をする私は、これまでトライアスリートとの会話に少なからず自信が無かった。

 

ロードレーサーの気持ちは、最も良く分かっているつもりだ。

17歳の時テレビでツール・ド・フランスを見て憧れ、始めたロードバイク。

自分にとって情熱の源であり、それは今も変わらない。

 

スペシャライズド・ジャパンに入社後、マウンテンバイクの仕事が新しく始まった。

そしてマウンテンバイクレース会場での仕事が多い。
これまでマウンテンバイクの経験はほとんど無かったので、ロードバイクだけではダメだと思いマウンテンバイクも始めた。

2013年・2015年の汗汗フェスタ(山口県)、2014年SDA王滝(長野県)しかレース経験は無いが、トレイルライドやクロスカントリー、ゲレンデのダウンヒルなども少しずつ経験を増やしてきたので、楽しみながら以前より自信もついてきた。

 

そして、トライアスロン。

 

それは、スペシャライズドにとって必須のカテゴリーになっている。
イベント担当者として、当然トライアスロンの会場に行く機会はすぐにやってきた。
トライアスロンとは無縁の人生だったため、アスリート達の様々な気持ちは分からない。

バイクの接客だけ出来ていれば良いのかもしれないが、それではアスリート達との距離感は縮めることはできないだろう。

イベントでの仕事を重ねる毎に、ロードバイク・マウンテンバイクと同じように、自らが経験することが必要だと考えるようになっていった。

 
しかし、土日に仕事をしているイベント担当者としてはなかなか大会にはエントリーできない現状。
いつ、どこの大会に出るのか?それは分からないが、いきなりその機会がやって来てからでは間に合わない。

 何も決まらないが時間だけ経過していくのはダメだ、と思い2014年の11月頃からランニングを少しずつ始めてみた。

1月には人生で初めてスポーツクラブに入会。休みの日は、ウェイトトレーニング、有酸素系エクササイズ、スイムをこなすのが日課となっていった。

 そして5月。身体には変化が起こっていた。
体脂肪が3キロ減って、学生時代にロード競技をしていた頃と同じ位の体重になっていた。

 
「いぜな88トライアスロン」に出ることが決まったのは6月。ところが6月、7月は仕事が多忙のため全然トレーニングは出来なかった。レースまであと3ヶ月となった8月、また少しずつ練習をし始めた。

 
そして、あっと言う間にレースを迎えることになった。

 
レース2日前の金曜日、仕事を終えてからホテル近くのプールで身体をほぐす。残暑のような那覇の陽射し、屋外長水路は気持ちよく、とても好感触だった。
しかし、前日の試泳ではかなり流されてしまい、他のメンバーからもかなり遅れ、自信を失ってしまった…不安はいっぱいだが、考えればキリがない。

 
自然に身を任せるしか無い。これまでのトレーニングを思い出し、とにかく落ち着いて行こうと再度心に決める。


 

午前9:00、号砲。
およそ500人の一斉スタート。

ウェイブスタート制だと思っていたので、かなり緊張した。波は穏やかと聞いていたが、自分はそれどころでは無く、密集や他のスイマーとのぶつかり合いにかなり戸惑う。

1周目はほぼインサイド、ブイ沿いだったので、あまり方向を間違えることは無かった。途中、ぶつかり合いもありゴーグルが少しずれ、スイムキャップが脱げそうになったので、泳ぎながらなんとか直した。

 

とにかくリラックスして泳ぐ!

 

それを思い出しながらなんとか1周目を終了。陸に上がる。
時計を見ると23分だった。それほど悪くないな、と思い、給水して落ち着いて再び海に入る。

かなり空いた状況で楽に泳げるはずだったが、上手く真っすぐ泳げず、他のスイマーとぶつかったり、ライフガードの方に行ってしまったり、1周目より苦戦した。

それでも冷静に。少しずつこなすことを考える。

 
陸が近づいてくる。やった!苦手なスイムが終わる。安堵感と嬉しさの中で上陸。
2周目は25分だった。まだバイクも沢山残っている。自分としてはかなり良かったと思ってしまった。

スイムで681kcalも消費していることには驚いた(このレポートを書きながらPOLARのデータを見て初めて知った)。


さあ、得意な(はずの)バイクパートだ。

初めてのトランジションは手元のPOLARではおよそ5分だった。
ナンバーベルト、ヘルメット、サングラス、補給の摂取・装備、ソックス、シューズ着用、慌てないように落ち着いて行う。ウェットを袋に入れないといけない、そういうことも知らなかった。とにかくやる事が多い!

なんとかミスも無く、完了。落ち着いてバイクをスタートした。
 
 
 

 

このコースは細かいアップダウンがある5周回トータル66kmとなっている。
自転車ロードレースでは無い。「ランニング勝負」と考えていたので無理をせず、66kmを2時間 つまりAvs.33km/hで行けたら良いかな、とレース前に考えていた。

 
平均よりバイクは速いので、ドラフティングに注意しながらガンガン抜いて行く。スイムと異なりとても気持ち良い。

 Venge ViASはとにかく静かで「チェーンがチェーンリングにかかりスプロケットを回す(当たり前ですが)」ような音、タイヤの転がり音、ホイールの音しか聞こえない。

S-WORKS EVADEを着用し、トライスーツはほぼエアロワンピースのような感じで、5ミニッツ(http://www.specialized.com/ja/ja/5minutes)を体現しているような感じだ。

 
自分はバイクと一体化し、その周りを静かに空気が流れていく。

レース後、他の参加者の方に「抜かれました」とか「スペシャライズドが来ると音が違う」などと言われたのは良かったのではないか(バイクでは特に良い印象を与えなければいけない!)。

 
気持ち良く走っていると2周目の前半でチームメイトのKさんを捉えた…ここで自分のスイムがいかに遅かったかを再度痛感することとなった。Kさん、速いなあ、まずい。「もっと追い上げないと」とペダルを踏む脚に力が入る。

 
確か3周目、竹谷さんに抜かれる。凄いスピードで行く竹谷さんと少し言葉を交わし、しかし無理をせずついていかない。

 すると、前方でその竹谷さんに必死でついて行こうとするライダーがいた。
すぐにチームメイトのMだと分かった。なかなか、頑張っており私とMとの距離は縮まらない…同時に、Mとこんなに離されていたのか、とショックを受けていた。

 
しばらくするとMに追いついた。

 
Mと並走し、会話するがMの調子はなかなか良さそうだった。

この位置からランの終わりまでMと並走はキツイ、なんとかここで抜き、突き放さないと  と思うが自分の疲労が徐々に出てきてしまい、なかなかスピードが上がらない。

Mもなかなか離れない。

 
バイクの練習不足が露呈された、そう思った…
4周目になり、ふと後ろを見たらMはいなかった。まあ、いようがいまいが無理をせず淡々と刻むだけだと集中。バイクパートを目標の2時間以内、1:59で終えたが、想像以上に消耗している感があり、ランニングにものすごい不安を抱えてしまった。

 
ランニングへのトランジションもとにかく落ち着いて装備出来た。
特に水分補給と補給食は抜かりなく行った。

 
さあランニングスタート、と走り出したが、ここまでトイレに行かなかったので寄る。これで2分位ロスした。不安の中で再度スタート。ランニングはアップダウンを含む片道10kmの折り返し、トータル20kmのコースだ。

 応援は本当にありがたい。地元のおじいさん、おばあさん、子供達。
様々な人が背中を押してくれる。



 

疲労なのか、補給取りすぎか、緊張か分からないが腹部膨満感のような感じで少し痛む。なかなかペースは上がらない。しかしながら、大腿部周りや腰などの懸念箇所に痛みも無く、なんとか普段通り走れることに気づいた。

これは練習の成果だろうか…分からないが、今の自分は1年前に全然ランニングが出来なかった自分とは全く別人だ。

POLARを見ながら5-6分/kmで2時間以内で行ければ良い、そう思いながら集中して走る。

竹谷さんとはたしか6-7km地点あたりですれ違う。ハイタッチをし、声をかけてもらうとパワーが湧いてきた。次いで松田さんとすれ違う。松田さんからもエナジーを頂く。

他のメンバーとはすれ違うことなく10kmの折り返し地点を通過した。10kmのペースは5:46/kmだった。

 ここまではまあ良し…

 復路に入り他のメンバーとどこかですれ違うはず。

確か11km地点あたりでKさんとすれ違う。Kさんは何人かの集団で走り、なかなか良さそうに見えた。

2kmしか離れていないのか…と思い、程無くして、ここで初めてチームメートYとすれ違う。練習はあまりしていないらしい、ナゾの男Yは、意外に速いので焦る…

 あれ?Mは?何かあったのか?進んでも進んでも来ない。

 
13km地点あたりのややキツイ上りでペースが落ちてしまう。
上りきったところだっただろうか。なんとなく、何かを感じたのだろうか…

 
無意識に後方を振り返ると、わずか5-10m後方にMがいた!

 
しかもコンタドールのように「バキューン」ポーズをしてきた。『あなたはもう終わりですね』と言われた気がした。


悔しい、万事休すか…

 
正直、かなりきつくなっていたので、Mと並走で行こうか、一瞬脳裏をよぎった。
が、しかし。自分の限界にチャレンジしよう、と身体が勝手に動いていた。

 
スイッチを入れてくれたのはMだった(ありがとう)。

ギアを上げて行く。ちょうど5-5:30/km位で走る選手がいたので、なんとか着いて行く。

後ろは、振り返らない。

ペースは平坦に入り5:00/kmくらいまで復活していた。

 
民家の間を抜け、大きな道へ入る左コーナーを曲がると後続が見える。
ここでようやく後続を確認。かなり離れているように見えた。
残り3km。ここからおよそ1km近くキツイ上り。もう脚も上がりにくい。腕も振れていない…

 
ここが今日一番の勝負所だと思い、気合いで走り続ける。
「冷静に、フォームを崩さないように」と意識出来たのは、良かったと思う。

 
そしてキツイ上りが終わった。

 

残り2kmは下り基調だ。
更にペースは上がる。4:17/km、最後の最後でしっかり走れているのは自分でも驚きだった(もっと速く走れた?)。

とにかく早くゴールしたかったが、最後の1-2kmがこれほど長いと思わなかった…

 
競技場で選手を迎える放送が聞こえてくる。やっと帰って来たことを実感する。

 

トライアスロンをゴールする瞬間。

 

それはどういうものなのか、最も知りたかったことのひとつだった。

 

競技場に入り、松田さんがカメラを向けて迎えてくれる。
「やったよ!」と伝える。嬉しさがこみ上げる。
 
 
子供達が迎えてくれる。応援に感謝だ。
宮古島トライアスロン大会で何度も見ているゴールの光景は、選手目線だと全く違った。
 
 
 

 
そしてゴールラインの向こうで、我らが竹谷さんが迎えてくれた。がっちり握手をし、嬉しくて抱擁した。竹谷さんに認めてもらいたい一心で練習をしてきた、それが報われたように思え、とても感動した。
 
 
 

 

写真を撮ってもらったり、飲み物を飲んだりし、安堵感と共に疲労感がどっときた。
グラウンドの芝にフィニッシャータオルを広げ、仰向けになり、空を見上げる。
空はうっすら晴れて、流れる雲がきれいだった。空を見ながら思った。

 
やっと『スタートライン』に立てた。

 
この日、私はトライアスリートになった。もう、お客様と話すのに何も隠す必要は無い。
そう実感した瞬間だった。

 
サポートして頂きました、竹谷さん、松田さん 本当にありがとうございました!